台東区のホームレス締め出しに思うこと
今回の台風、うちは無事でした。
実家や地元の友人達も、家屋含め皆無事だったとのことでホッとしています。
が、地元県内含め各地で河川の氾濫で泥まみれになっている地域もあり、ニュースを見るたびに苦しい気持ちになります。
どうか、寒くなる前に皆様の生活が少しでも落ち着きますように。
そんな中、台東区のホームレス締め出しが話題になっています。
住所が無いから入れません、と断られて、あの風雨の中に戻る。
普通の生活をしている私にはちょっと想像できない状況です。
どうなんだろうとネットで話を追いかけてみたのですが、ちょっと、一筋縄では行かない部分もあるのだなと感じます。
台東区のホームレスの方の中で、結核の症状がある方がいるらしいという話なんですね。
来られた方が結核かどうかは判りません。
じゃあとりあえず誰でも受け入れないと、と言うのは絶対的に正しいし簡単ですが、結核のある方と免疫力の低い高齢者や子供を同じ避難所に集めてしまうのは危険でしょう。
何度も言いますが、結核があるかどうかは判りません。
けれど、無いとも言いきれません。
結核は簡単には伝染らないという話も目にしましたが、空気感染、飛沫核感染であり、閉鎖された空間で伝染りやすいとのこと。
現場が避難所かぁ、と考えると、状況が悪いよなと思います。
また、ホームレスの方の中には精神疾患をお持ちの方も多いそうです。
いえ、「精神疾患をお持ちだからホームレスになってしまっている方も多い」そうです。
そういう方と同じ場所に避難することを不安に感じる方が多い場合、どうするかという話になるわけですよね。
精神疾患がある方全てが迷惑行為や加害行為を行うわけではありません。
ホームレスの方は放置して良いなんてのは、人でなしです。
正しい在り方としては、皆が助かるべきです。
心身が病気であれ、差別される事なく皆が助かるべきです。
ですから、公的な避難所は全ての人を受け入れるべきだと思います。
しかし。
現実問題として、避難してくるのは一般人です。
心身の病気に対する正しい知識や対処法を持ち合わせた人間がどれくらいいるでしょうか。
不安に駆られた多くの人間がパニックになった時に、どうにかできるでしょうか。
避難所に来なくてはならないような事態になっている時点で、健康な人間であっても精神的に穏やかではない。
そんな状態の人間の集まりにさらなる不安要素を入れたくない、という気持ちも、私は判るのです。
そして、今までの災害時の避難所において、ホームレスの方と一般の方との間に問題が起きた過去が存在するという事実も、一緒に考えなければならないのではないかと思うのです。
避難所を運営するって物凄く大変な事だと思うので。
山野地区という地域があります。
いわゆる日雇労働者が集う場所で、日本3大ドヤ街の1つです。
これが台東区にあり、山谷労働センターではホームレスの方の避難受け入れを行っていたそうです。
全てから追い出されたわけではないと知って、ちょっと安心しました。
助ける人を選別するという事は怒られて然るべきだし、あってはならない事です。
駄目です。
でも、区の対応を責めて終わりで解決する話でも無い。
問題の根っこを見ずに悪い所を上から叩いても、原因が消えなければ再発します。
ホームレスの方がどんな状態なのか、受け入れるとどうなるのか、受け入れるためにはどうしたら良いのか、どんな準備をしたら良いのか、ホームレスの方と事前に話し合っておく事はできないのか。
突っ込んで考えていかないと、外から正論をぶつけるだけではただの傷つけ合いになってしまう。
避難所問題自体は、1度全員を受け入れて内部で部屋を分ける対策をする、他の避難所に誘導するなど、他に対応の仕方があったのではないかと思います。
「区民しか入れません」
は、観光地でもある台東区として駄目です。旅行者はどうするんだという話にもなるので。
そもそも都内は最初から避難所が足りていないと思うんですよね。
「その避難所、被災するんじゃないの?」という場所にある建物が避難所になっていたりもします。
新しい箱物を作るべきだとは思いませんが、区と提携して非常時に開放する場所を作るなどしておいたほうが良いのではないかなぁ。
ホームレスの方がいらっしゃるのが分かっているのだから(そこは想定して情報共有しておかないといかんでしょ流石に、と思いました)、ホームレスの方に優先的に避難してもらう場所を作って周知しておくとか。
世田谷区ではホームレスの方に事前に避難に関するチラシを配布したそうです。
人数や居住地域を把握していて行政が頑張れば、こういう対応も可能なのだなと驚きました。
ただ、山谷の話もあるように台東区は世田谷区と状況が違うかもしれません。
区だけでは力が足りなければ部分的に民間と協力しても良いと思うし(炊き出しをしている方やフードバンクなどで活動している団体など)、やりようはあるのではないかと思う。
というか、やらないと困ると思う。
関東は大きな地震が来る予定もあるし、その時また同じような問題が起きないように。
でも本当の問題は、ホームレスがホームレスとして放置されたまま存在している事なのではないでしょうか。
中には確固たる意志を持ってホームレス生活をされている方もいて、そういう方は福祉の方が保護、生活再建を手伝っても元の生活に戻ってしまうそうです。
そういう選択肢もあって良いと思います。
しかし、福祉に繋がることができずやむなくホームレス生活をしている方、生活保護を足掛かりにすれば生活再建が可能な方もいらっしゃる。
そういう方は救われた方が良い。
そして、精神疾患のためにホームレスとして生活している方は、保護、治療が必要なのではないでしょうか。
後ろ盾がない事を良いことに犯罪に巻き込まれる、加担せざるを得なくなる事も考えられますし、結核の件のように伝染病が蔓延する原因になる可能性もある現状。
貧困ビジネスなどという「それビジネスちゃうんちゃう?」という物が存在している現状。
「放置されたホームレス」という状態こそが、考えるべき問題点なのではないかと思うのです。
ホームレスは自己責任という声も聞きました。
でもほんとは、大変な人が助けられる社会のほうが良いんです。
できるかできないかは確かにあるけど、良い方を目指さなかったら堕ちるだけです。
生活保護が贅沢なのではなく、
「生活保護が贅沢に見えるような生活をせざるを得ない一般人が多い現在がよろしくない」
のです。
あなたも私もあの人も、みんな幸せなのが良いのです。
不幸比べをしてたらみんなで転がり落ちていくので。
そもそも、みんな幸せになるためにみんなから集めている物があるじゃないですか。
税金ですよ。
上の方の人達が無駄遣いして下に降りてこないのはおかしいんです。
税金は、みんなの命と生活を支えるためにあるんだから。
偉い人の人気取りや、お金を転がす遊びに使うものじゃないんですよ。
「みんな」にはホームレスの方も入るのです。
無駄遣いされた分の税金がちゃんと「みんな」に遣われてたら。
そう考えると、政治の大切さに繋がるんですよね。
ちょうどこの本を読んでいた所だったので、山谷地区と重なって色々思うところがありました。
近所のホームレスの方は毎朝小さな公園をキレイに掃き掃除してくれています。
みんな助かるべきで、みんな助けるべきで、そのためには行政と私達自身の知識や物資の準備が必要です。
難しいし、大変ですけど。